ドレスの締め付けに絶えながら、謁見の間に向かう。
と、そこにある1番大きな玉座には、正装に身を包み、王冠を頭上に携えた父が座っていた。
「おや、綺麗だね。若い頃のお母様にそっくりだ」
と、穏やかな微笑みで迎えてくれたお父様。
「まぁ!私こんなに可愛らしくなかったわよぉ」
私よりも反応が大きかったのは母で、頬を紅くして両手で抑えていた。
「何を言ってるんだい?金色の花のようで、僕はひと目で恋に落ちたというのに」
「いやですわ、お父様ったら」
あぁ、始まったよ…………。
頼みますから、娘の前でイチャイチャしないでください。
ていうか約20年それつづけて楽しいの?
お父様もさ、もう手ん中入れてんだから口説かなくていいじゃん。
何してんのほんと……。
はぁ、と頭が痛い私。
ちら、と後ろのマギーに視線をずらす。
そして、先ほどの彼女との会話を思い出す。
……ないかもしれないわよ、マギー。
だって私、このふたりを見てもときめくとか羨ましいとか、私も、とか思わないんだもの。
……………どうしようかなほんとに。
結婚、ほんとに嫌になってきた。
私はあと数十分後に現れるであろう婚約者候補たちに対して、そのままUターンして帰ってくれないかな、なんて思い始めていた。


