既にスマホからなず姉の怒声は聞こえない。
どうにか和解したのだろうか?
そんなことを考えていると目の前にスマホが差し出され、塞がれていた口も自由になる。
「なず姉は何て?」
「渋々だけどOK出してくれたよ。まったくなっちゃんはブラコンだなー」
藤邦さんは飄々とした態度でリビングから出ていこうとする。
「それじゃ、荷物取ってくるわ。朱鷺、私が帰ってくるまでコトリ君をよろしくねー」
「藤邦さん!」
こっちを振り向かずに手を振る彼女を俺は呼び止めた。
「あの、これからよろし──」
「コトリ君、その言葉は要らないよ。私達は守るべきものだから守るだけだからね」
「でも……」
「あと、私のことはアリスでいいよ」
彼女はこちらを振り向いてニカッと笑うと身を翻して、リビングを出ていった。
この時、リビングの扉の向こうで彼女が意思の強い目で前を見ていることを俺は知らない。
彼女が俺を守る本当の理由を俺は知らない──。



