ふと、スマホが手から消えた。
綺麗な指でかっさらわれたスマホを目で追うと、藤邦さんが楽しそうに笑いながら俺のスマホを持っている。
そして、口元に指を当てて、「しー」と目で合図してきた。
『ちょっと天河!聞いてる!?』
「やほー、なっちゃん。弟君は鼓膜が痛いってスマホを私に渡してきたよ」
「は!?」
藤邦さんが勝手に持っていったんじゃん!
そう抗議しようとしたら、後ろから風間さんに口を塞がれて出来なかった。
「面白いから黙っててね」
理不尽が此処にも二人いた……。
藤邦さんとなず姉って似た者同士のような気がしてきた。
なず姉が彼女を毛嫌いしているのは単なる同族嫌悪なんだと思う。
「──だから、死なせないって。私の言うことが信用できない?ちゃんと守るから安心してよ」
一人項垂れていると、耳にそんな言葉が届く。
さっきまで笑っていた藤邦さんの顔は真剣という言葉がぴったりなものへと変わっていた。



