「お茶と少しですが、お茶菓子です」




お茶とお茶菓子をリビングのテーブルに置くと、風間さんは「ありがとう」とソファーに腰掛けた。




でも、藤邦さんはある一点を見つめて動かない。




彼女の視線の先には壁面収納の棚があって、そこには俺やなず姉の小さい頃の写真や行事などの時の写真が飾られている。




「藤邦さん?」



藤邦さんがどの写真を見ているのか気になって近付くと、彼女が見ていたのは家族四人で写った写真だった。




それはまだ俺やなず姉が小学生の頃の写真で、父さんやもちろん、母さんもいた頃のもの。




「……コトリ君、お母さんは?」




写真を見ていた彼女の視線が俺に向けられる。



少しつり上がった長い睫毛の伏せる瞳……。



その目は全て見透かしているようで、嫌だった。



まるで、俺のことを知らないはずなのに知っていて、わざと聞いてきているようだった。