「私も好きだったよ、天河……」




もう彼には聞こえないかもしれない。




でも、まだ彼は傍にいるような気がして言わずにはいられなかった。





ふと、二度と開かないはずの彼の目から一筋の涙が零れ、頬を伝った。





まるで、私の言葉が聞こえたと言うように。





「良かったね、天河……」





すると、小鳥遊潮と小鳥遊さんがこっちに近付いてきて傍に座った。





そして、小鳥遊潮は優しく彼の頭を撫でた。





その姿はまるで寝ている子供をそっと撫でる優しい母のようだった。





「好きだったアリスちゃんの腕の中で眠れて、良かったね……天河……」





何度も何度も彼の頭を撫でる小鳥遊潮の目には涙が浮かんでいる。




彼女は彼を産み落とした時からこうなることが分かっていたのだろう。





それでも、彼が二十歳になるまでそれを教えなかったのは……殺さなかったのは母としての愛があったからなのだろう。