「なら、良かった。父さんやアリスさんの話では切碕も目立った行動は起こしてないって」
切碕は父さんに負わされた怪我以降、目立った行動を起こしていない。
それは奴の仲間達も同様だった。
「そう……」
母さんはそう呟くと、窓の外を見た。
外は夏が終わりに近付いているのか、風が秋の風になってきている。
寒いというわけではないが、夏のような暑さはもうあまり感じられない。
「母さん、聞いても良い?」
「何?」
「切碕は下の名前がないの?母さんは結婚する前は切碕潮だったんでしょ。だったら、切碕にも名前があるはずだよね?」
母さんだけじゃない。
風間さんだって羽取さんだって一飛さんだってちゃんと名前がある。
なのに、切碕だけ皆名前で呼ばない。
まるで、あえて名前を呼んでいないようにも思える。
母さんは俺の問いに、少し考えるような素振りを見せる。



