「天河君、そんなに難しく考えなくて良い。朱鷺は瀕死なのに、僕は元気。理由は簡単だよ、僕は怪我をしてないからさ」
切碕は俺が疑問に思っていることを感じ取ったように言い、腹部から何かを取り出して俺の前に放った。
目の前に落ちたそれはよく刑事ドラマで使われる血糊が入った袋だった。
つまり、切碕の今までの行動は演技?
「朱鷺と潮姉さんが手を組んで僕を殺そうとしているのは分かっていたよ。だけど、せっかく二人とも僕に気付かれないように動いてたみたいだから気付かないふりをしていたんだ」
「……見謝ったわね……」
「母さん!」
俺は体を起こそうとする母さんに駆け寄り、体を支えた。
切碕はそんな母さんに赤い目を細め、笑みを向ける。
「そう、潮姉さんは僕を甘く見すぎたんだよ。僕は全て分かっている。10年前、潮姉さんが何で家族を捨てて、僕の所に来たのかもね……」
切碕の言葉に、母さんはぎりりと歯を食い縛った。
まるで、その理由を切碕に知られたくなかったかのようだ。
「だからこそ、僕は天河君を仲間にして、殺人鬼にしたいんだよ。潮姉さんが自分を犠牲にしてても守ろうとした存在……家族を──」
その言葉で理解した。
母さんは俺達家族を捨てたんじゃない。
切碕の魔の手から守ろうとしていたんだ。
──と。



