「言っておくけど、天河君が刺されたのも朽月江莉子が莉瑚を殺したのも僕が仕組んだことじゃないよ。ただ、僕は面白いものが見れると確信があっただけだ」





笑みを浮かべながら言った切碕に、潮は眉をひそめる。




息子が瀕死になり、友人親子が死んだ。




さすがの潮もそれには動揺した。




しかし、それ以上切碕が言うことに突っ込む気にはなれなかった。




これ以上突っ込めば、勘のいい切碕なら彼女の目的を見抜くかもしれないからだ。




「……それより、何書いてたの?」




「黒い本さ」




そう言って、切碕は潮に書いていたノートを差し出した。




枠線のないノートのページは真っ黒で、不気味なことに文字や手書きで描かれたイラストは赤い文字で書かれている。




潮はそれを切碕からそのノートを受け取ると、ペラペラとページをめくった。




ふと、めくる度に微かに血の香りがする。




「血の香りがするけど、もしかして、この赤い文字って……」




「僕の血だよ」




切碕はクスリと笑って、潮に包帯の巻かれた手首を見せた。




此処から取ったと言いたいらしい。