『私をちゃんと見てくれたのは貴女とあの人だけね』





そう言って、嬉しそうに笑った女。




その時にその女が容姿だけで彼を射止めたのではないと分かった。




と同時に叶わないと悟る。




「潮、アンタの息子は良い子ね……」




自分が育てた我が子とは大違いだ──。





江莉子は虚ろな目を閉じた。




『あたし、お母さんみたいな刑事になる』




まっすぐな目でそう言った娘の姿が今でも思い出される。




あの言葉も嘘だったのだろうか?




そう思うと、やるせない気持ちになる。




今、娘が何処にいるか江莉子には分からない。




しかし、見つけたらやらなくてはならないことが彼女にはあった。




母として道の外れたことをした娘にしてやれること。




それは悲しすぎる決断だった──。