「……御宅の息子さんの様子は?」
この小鳥遊親子には大学生の家族がもう一人いる。
その息子は今回の事件の重要な鍵を握っていて、彼が奴の手に堕ちることはこちらからすれば完全な敗北と同義だ。
「今朝、七砂に様子を見に行かせたのですが……」
小鳥遊さんはこれまでずっと黙りこくっている娘の方を見て、話すように促した。
恐らく、小鳥遊さんは既に息子の様子をなっちゃんから聞いているのだろう。
その証拠に小鳥遊さんの表情は何処か悲しげだ。
「……夢を見たらしい。内容は教えてくれなかったけど、多分あの記憶の夢だと思う」
なっちゃんの声はさっきとは打って変わって、強気も覇気もない。
それほど、彼女にとって弟は大事な存在なのだろう。
でも、私はそんな彼女に残酷な言葉を告げる。