『まだそんなことを言っているのか?』



──また≪お前≫か……。




『≪お前≫とは酷い言い草だな。僕は≪お前≫なのに』




──毎度毎度言わなくても分かってるよ。



心の中で俺の中の≪僕≫と話をしていると、夜の暗がりの中を歩く一つの影を見つけた。




「あれは……莉瑚?」



暗がりの中を歩くのは莉瑚だった。




いくら剣道を習ってたからとはいえ、女が一人で出歩くには遅い時間だ。




「おい、莉──っ!?」




急に後ろから口を塞がれた。




な、何だ!?