「……あの娘、切碕様に利用されているとは知らずに。憐れですね……」
明晴は憐れむような目を去っていた莉瑚に向けた。
「「「憐れ憐れー!」」」
切なそうな顔をする明晴に対し、三つ子たちは楽しそうに三人で手を繋ぎながらクルクル回っている。
「おーい、切碕ー!あの女、どうせ仕留められないだろうし、仕留め損ねた奴は俺が殺っていいか?」
「黛、抜け駆けか!切碕様、是非妾に」
「イヤ、私ニ殺ラセテヨ」
黛を始めに楊蘭や胡蝶までもが莉瑚の失敗を確信し、彼女が狙う女の始末を受け継ごうとしている。
「確かに周君とアリスちゃんが庇護して、格闘スキルを教え込んだ娘だから莉瑚には殺せないね。んー、まあ、その娘は害が無さそうだし、別に処分しなくても良いや」
切碕は単に莉瑚を焚き付ける為にその話をしたまでで、別にその女が生きようが死のうがどうでも良かった。
気分屋のリーダーの言葉に黛達は不服そうだったが、切碕には逆らえないのでそれ以上はその話を持ち出さなかった。
「……それより、僕の≪息子≫をそろそろ此方側に引き込もうかな」
≪息子≫という言葉に、場の空気が変わった。
切碕に息子がいることは潮と明晴以外、知らなかった事実だからだ。