柳は「ありがとう」とそのハンカチを受け取ると、涙を拭った。
「……でも、私はまだ幸せだよ。お母さんの入院先で知り合ったアリス様のお陰で、直接的な刑罰を実行したことがないの」
「直接的な刑罰?」
「簡単に言えば、刑場外の死刑執行のことだよ」
すると、今まで黙っていたアリスさんが不愉快そうに口を開いた。
「アリス様……」
「いくら犯罪者だからって犯罪者を殺すなんておかしいんだよ。犯罪者を殺す人間を作り出すのと同じでね。藤邦がやっている人体実験も一種の殺人と一緒だよ」
アリスさんは不機嫌な態度を露にしながら、椅子の背凭れに背中を預ける。
「アリス、これ以上は話さない方がいい。此処も誰に聞かれてるか分からないんだから」
歯に衣着せぬ彼女に、風間さんがストップをかけた。
風間さんが止めたことで、アリスさんは更に不機嫌そうな顔をする。
「私が当主になるのを嫌がってる奴らが見てるって?上等じゃない」
「アリスさん、そう思ってるのはごく一部です。大半の人間は貴女が当主になることを望んでいる」
売られた喧嘩を買うような勢いのアリスさんに、和泉が諭すように言った。



