「──で、そこから周様にスカウトされて、犯罪者を裁く飼い犬になったって訳」
柳は話を終えると小さく息を吐く。
彼女の壮絶な過去に、何も知らずにこれまで生きてきた俺がどれだけ幸せだったのか思い知った。
「……今更だけど父親を殺したこと、後悔してるんだ」
ふと、柳はソファーに寄りかかると指を膝の上で組み、そう呟いた。
「え……?」
「あの頃、私は確かに父親を憎んでた。でも、殺したらいけなかったんだって少ししてから思った」
殺してしまうほど憎んだ父親を殺したことを悔やむなんて、何があったのだろう?
「……父親を殺したって知ったお母さんが泣きながら私に言ったの。『ごめんね、知栄。お母さんのせいで知栄の人生を壊しちゃったね……』って……」
言われたときのことを思い出したのか、柳の目から涙が溢れて頬を伝う。
「別に私が勝手にやったことだからお母さんは悪くなかった。寧ろ、私がやったことを責めて欲しかった。それなのに……」
「柳、もう話さなくて良い。もう充分分かったから」
後悔しているのに、それを更に思い出させて更に後悔させるなんてあんまりだ。
俺はハンカチを出すと涙を拭うようにと柳に手渡す。



