「玖下さん!」
「──っ何してんの、早く行くんだ!」
「天河!」
俺は和泉に手を引かれて、玖下さんの背中を一瞥すると駆け出した。
外を走っていると脇道から男子学生が飛び出してきて俺の姿を見つけるなり、掴み掛かってくる。
でも、それを反射的に交わして、駆け抜けた。
もうこの学内には味方は和泉と玖下さんだけ。
後はもう……。
「天河、あそこから中に入って隠れよう!」
和泉の指差す先にはほとんど人が訪れない学棟で、ドアから中に入ると辺りを見渡せる二階に上がった。
鍵のかかっていない空き教室に入って、俺は全身から力が抜けたように壁に寄りかかった。
「天河、大丈夫?」
「色々キツいかな、少し……」
肩で息をして俯きながら和泉の問いかけに答える。
さっき、脇道から出てきた学生……。
彼は俺を何がなんでも捕まえてやる、という目で見ていた。
確かに自分の命は大事だろうけど、面と向かってあんな風に見られたらなかなかキツイ。



