『この学内にいる小鳥遊天河君を捕まえて、僕に差し出すんだ。連れてくるまで一時間追い掛けるのを待ってあげるよ。今で僕に彼を差し出せれば、君達は死なない』
放送から聞こえる切碕の声に、玖下さんと和泉が俺の方を見た。
「俺……?」
切碕が俺を狙っていたのは知っている。
でも、この状況で名指しされてしまっては俺は──。
『──人間は極限状態の時、自分が助かるためには手段を選ばない。人間は何処までも残酷になれるんだよ』
その言葉は俺へ向けられているように思えた。
その言葉を最後に、切碕の声は聞こえなくなった。
「天河、とりあえず身を隠すぞ。摂紀さん、セキュリティの保護はもう諦めましょう」
「そうだね。先ずは小鳥遊君の身の安全の確保を優先しよう」
玖下さんはモニターをオフにすると、ドアに近付いた。
でも、彼はドアを開けようとしない。
「摂紀さん?」
「……和泉、僕がドアを開けたら小鳥遊君を連れてあの窓から外に出るんだ」
玖下さんの言葉に、全てを察する。
このドアの向こうには既に学内にいる人達が集まっているのだろう。
俺を切碕の前に差し出すために──。



