キレ気味の女とは対称的に、彼は意地悪そうに笑っていた。




「フライングした罰ですよ」




「この性悪が……」




でも、悪態をつく女に、彼はそっと手を差し伸べた。




「はい、掴まってください。お詫びに夕飯はアリスさんの好きなものを作りますよ」




「……何でも?」




「はい。何でも作りますよ」




「じゃあ、ハヤシライスで許す」




手に掴まって立ち上がった女の言葉に、彼は「単純……」と穏やかに笑った。




その笑みはあたしに向けられたことはない。




好きな人に向ける笑みだ。