「藤邦様は何か知っているんですか?」
「知ってると言えば知ってるし、知らないと言えば知らない」
「……馬鹿にしていますか?」
「最初に馬鹿にしてきたのは貴女でしょ?」
アリスさんはしてやったとニヤリと笑った。
そして、身体を捻ると再び歩き出した。
彼女の手を掴んだままだから、俺も自然と歩き出すことになった。
でも、アリスさんは歩きながらうしろを振り返る。
「……娘が大事ならしっかり見てないと、悪い男に遊ばれちゃうよ?朽月サン」
意味深な彼女の言葉に、俺も江莉子さんも頭には疑問符が浮かんだ。
そんな俺達の反応を鼻で笑うと、前を向き直って伊江への帰路を進んでいく。
俺は江莉子さんに頭を下げて、アリスさんと共に歩く。
「アリスさん、ハラハラさせないでくれますか?」
アリスさんの手を離して、隣に並ぶと少し背の低い彼女に視線を落とす。
「何で?」
「江莉子さんは空手の有段者なんですよ!何かあって、喧嘩になったら……」
「その心配はないよ」
すると、俺達の目の前に、風間さんが静に降り立った。
「藤邦の跡取りが一人で歩くわけないよ。有事の時は俺が男であろうと女であろうと容赦しないから」
風間さんは黒い笑みを浮かべたものだから、全身に悪寒が走る。
……うん、俺の心配は余計なお世話だったらしい。



