「江莉子さん」
莉瑚のお母さん、江莉子さんは買い物袋を腕にかけながらこちらに向かって歩いてきた。
「喪服ってことはもしかして、あの事件の被害者の葬儀に出てきたの?」
「……ええ、まあ」
「そう……。私も現場にいたけど、今までに無いくらい残酷なことをする犯人よね」
江莉子さんは現場の惨状を思い出したのか、険しい顔をした。
彼女は父さんと同期だけど、鑑識に所属しているから現場検証やらでそういう現場を直視することが多い。
そんな人が今までにないくらい酷いというのだから余程酷かったのだろう。
「貴女が噂の藤邦のお姫様?」
すると、江莉子さんはアリスさんを捕らえた。
アリスさんというよりかは俺が掴んでいる彼女の手に向けられている。
お姫様という江莉子さんの言葉に、アリスさんは眉をピクリと動かす。
「浮世離れした容姿に、纏う高貴な雰囲気。噂に違わないお姫様のような方ですね」
「……嫌味?」
「いえ、違いますよ。誉め言葉です」
……何かふたりの間に火花が散ってる気がするのは気のせい?
「御高くとまってるお姫様は置いといて、天河君」
「はい!?」
急にアリスさんから俺に話を振られたものだから声が裏返ってしまう。
しかも、嫌味からの話題変換だったから掴んだ手からアリスさんの怒りが感じられた。



