「アリスさん?」
声をかければ、アリスさんははっとしたように俺の方を見た。
「どうかしましたか?もしかして、琴梨さんを殺した犯人が──」
「コトリ君」
「はい?」
「お腹減った。帰ろう」
そう言ってアリスさんは何事も無かったように、歩き出した。
今、アリスさんは何かを誤魔化した。
その何かは何なのか分からないけど、誤魔化すということは俺が知ったら駄目なことだろう。
隠されたり、誤魔化されると気になってしまうのが人間の本能だ。
俺は前を歩くアリスさんに追いつくように歩き出すと、彼女の手を掴んだ。
「どうしたの?」
「……アリスさん。今、誤魔化しましたよね?」
「何を?」
「何をって──」
「あら、天河君?」
ふと俺の言葉に、女の人の声が重なった。
あぁ、こういう時に限って邪魔が入るんだよな……。
アリスさんが逃げないように手を掴んだまま声がした方を見れば、そこには莉瑚のお母さんがいた。



