ふと、しまったばかりのスマホに着信が来た。




誰かと思い、スマホのタッチパネルを見るとなず姉だった。





「もしもし、なず姉?俺、今忙──」





『天河、落ち着いて聞け』




「は?」




『今、署から連絡が入って琴梨ちゃんの他殺体が発見された』




なず姉の言葉に、スマホが指から滑り落ちる。




カシャンと音を立てて、地面に落ちたスマホをアリスさんが拾ってなず姉からの通話に出た。




「もしもし、なっちゃん?うん。うん。……分かった」




アリスさんがなず姉と話しているけど、俺の耳には届かない。




「琴梨さんが殺された……」




俺のせいでかつて愛した人が殺された……。




その事実が胸に重くのし掛かってきた。




「コトリ君、とりあえず家に帰ろう。なっちゃんも小鳥遊さんも心配してるよ」




アリスさんは放心状態の俺の手を引く。




俺は半ば引っ張られるように夜道を歩いた。




そう遠くない所で、パトカーのサイレンの音がする。




その音は悲しいほど静かな夜に響いていた──。