『もしもし、朝比奈です』



電話に出た声は穏やかだけど、少し苛立ったような男の人のものだった。




「夜分遅くに申し訳ありません、小鳥遊です。あの、琴梨さん帰ってますか!?」





『天河君?ああ、琴梨は出掛けたきり帰ってなくて、私も妻も心配してるんた」




電話に出た琴梨さんのお父さんは俺だと分かると穏やかな声に変わり、そう教えてくれた。




出掛けたきりって俺と会ったときか?




今はもう夜の10時を回っているし、琴梨さんと会ったのは3時くらいだ。




帰っていないなんておかしい。




「分かりました、ありがとうございます」




お礼を言って電話を切ると、スマホをポケットにしまう。




すると、後ろから手を引かれる。




振り向けば、軽く息を切らした風間さんと完全に息が上がり、膝に手をついて呼吸をするアリスさんがいた。




「待った、小鳥遊君!こういう時は周さんに探してもらった方が早い」




風間さんは俺の手を離すと、腕で汗を拭う。




確かに寿永さんならすぐに見つけられるかもしれない。




でも、その連絡を取っている間にも琴梨さんが危ない気がする。





いや、この探し回ってる間にも琴梨さんは──。