「何で、刺さらないんですか?身体が己の意思に反するなんてあり得ない……」
「あり得ないことが起きるのが人の身体だよ」
アリスさんはハサミの持ち手を指でクルクル回しながら、俺の目の前にしゃがみこんだ。
下から見上げてくる彼女の目には何処か冷たさを感じる。
「アリスさんは俺が知らないこと全部知ってるんですよね?」
「うん、知ってるよ」
「教えてくれませんか?俺、もう隠し事をしないでください」
「……良いよ、教えてあげる。でも、その前にちょっと昔話をしてもいい?」
昔話?
頭を少し傾げると、彼女は苦笑いを浮かべた。
その目には冷たさは感じられない。
でも、その代わりに哀しみが感じられた。
「昔話って言っても、六年前のことなんだけどね」
アリスさんは六年前のことを思い出すように話し始めた。



