「まったく、依良には言ってないんだから気を付けて来てくれる?」
ネクタイを緩めて、眼鏡を外したら玖下さんはさっきとは違う普通の口調でアリスさんに声をかけていた。
おぉ、オンオフ付けられる人って凄い。
「だって、依良が摂紀を貸してくれないのが悪い。それに、彼女が来てくれるなら依良も願ったりじゃん」
拗ねる子供のように唇を尖らせるアリスさんに、彼は呆れたと言わんばかりにため息を吐いた。
風間さん達はその会話が慣れっこなのか、気にとめている様子はない。
廊下を歩いていると階段があって一階に降りると、突き当たりのドアの鍵を玖下が開けた。
入ってすぐにテーブルと椅子があって、真っ正面の壁にはたくさんのモニターが設置されている。
まるで、ドラマの中でよくある秘密組織の会議室みたいだ。
「とりあえず、座って。コーヒー入れるから」
玖下さんは手際よくコーヒー豆からコーヒーを入れ始めた。
椅子に座って、少ししてから目の前に差し出されたコーヒーは香りも色も完璧で、味もバリスタが入れたような味だった。



