キッカケ?



そのキッカケさえなければ、俺の中の殺人思想を閉じ込めておくことが出来る。




「アリスさん、そのキッカケって何だったんですか?」




俺はそのキッカケを未然に防ぐために、彼女に問う。



今ならまだ遅くない、防げるはずだ。




「≪絶望≫を感じること。切碕は自分の生まれた経緯、存在理由に絶望して眠っていた殺人思想を呼び覚ました」




「絶望を感じること……?」




胸の音がうるさい。




絶望?



絶望を感じたことは──あ……。




俺はさっき切碕から≪ジャック・ザ・リッパーの血を引く≫と聞かされたとき、絶望した。



俺自身の存在、夢、家族、これからの未来。




全てに──。