幸いにも転ばずに済んだけど、一体何に躓いたのだろう。 振り返ってみれば、そこには女の人が倒れていた。 「大丈夫で──っ!?」 急病人かと思って慌てて駆け寄ろうとしたが、俺はそれ以上近付けなかった。 女の人は腹部を切り裂かれていて、明らかに絶命していると分かった。 でも、俺が近付かなかったのはそれが理由じゃない。 「何で俺がナイフ持ってんの……?」 そう、俺の右手には血塗れのナイフが握られていたから。