「相変わらず、最低な男ね」



少し離れた位置では彼の仲間がその光景を見て、険しい顔をしていた。



「しかも、よりにもよって莉瑚ちゃんに目を付けて……。天河や江莉子が知ったら──」



「潮様、ご子息とご友人が気掛かりで?」




彼女の隣に立つ獣耳の男が問うが、彼女はそれ以上何も言わなかった。




それ以上は彼女自身以外知らなくて良いこと。



いや、知られてはいけないことだった。




「あの娘、自らの欲を優先しましたね。彼は……切碕様は本当に酷い方だ」




男の言うとおりだ。




切碕という男はその容姿で、その言葉で他人を誘惑する。



それによって、彼にとっては道具で過ぎない者達も自然と彼へ忠誠を誓ってしまう。