限られた日の、限られた時間に、限られた場所でしか、きみには会えない。
どうして、そんな簡単なことに気づけなかったんだろう。
きみのそばにいられた時間は、まるで奇跡のようなものだったんだ。
わたしは、奇跡を当たり前と勘違いしていた。
バカだなぁ、わたし。
次、雨が降った日に、きみに話しかけてみよう。
勇気を出して、一歩踏み出してみよう。
そうしたら、何か変わるかな。
空が灰色の雲に包まれたのは、一週間も日にちが過ぎてしまってからだった。
慌ただしい音が家の中で響き渡り、お母さんが今日も寝坊したことを察する。
湿気を多く含んだ外に、身支度を整えたお母さんが飛び出したと同時に、わたしも軽い身のこなしで家を出た。
「あら、あなたもお出かけ?」
わたしが嬉しそうに返事をすれば、お母さんはニコッと微笑んだ。
腕時計で時間を確認したお母さんは、ハッとした様子で「行ってきます!」と声を荒げながら走っていった。
行ってらっしゃい、お母さん。
わたしも行かなくちゃ。



