それからは毎朝、きみに会うためだけにバス停の近くをうろうろして、きみと仲良くなれるチャンスを窺っている。
バスが来るまでの、わずか数分。
きみのそばにいられる、唯一の時間。
どんなに雨が降ろうと、風が吹こうと、その時間はわたしにとって最高に幸せなものなんだ。
けれど、きみにとってはそうではないようで。
雨を鬱陶しそうに思いながら、顔を引きつらせている。
そんなきみが、わたしの存在に気づいてくれたことは、今まで一度もない。
きみと目が合わないかな。
きみに話しかけられないかな。
そわそわして、どきどきして。
こんなにもきみに夢中なのに、きみはやっぱり今日もわたしに気づいてはくれないんだ。
何回も、きみの隣に並んだり、きみの背後を歩いたりした。
それでも、きみの視線はわたしには向かない。
バスが、指定の時間よりもやや遅くやって来た。
きみは傘を折りたたみ、バスに乗ってしまう。
あーあ、今日もダメだった。
雨にあたりながら俯いて、重い足取りで家に帰った。



