ザアザア降りしきる雨を、今日も窓越しに眺める。
梅雨の季節に入ったおかげで、ここ最近は毎日雨だ。
「じゃあ、行ってくるわね」
スーツを身にまとったお母さんが、忙しなさそうに家を出て行く。
行ってらっしゃい、と言う前に、扉は閉じてしまった。
相変わらず、朝が苦手なんだから……。
なんて、わたしものんびりはしていられない。
早くしないとバスが来てしまう。
慣れた手つきでリビングの窓を開けて、そこから外に飛び出す。
最近はずっと、こうやって家を抜け出しては、家のすぐ前にあるバス停へ駆けている。
……なぜって?
それは、“きみ”に会うため。
激しい雨音の中、今日もバス停の前をさりげなく通る。
チラリとバス停を横目に捉えれば、傘をさしながら本を読んでバスを待っているきみがいた。
落ち着いた雰囲気を醸し出しているきみを、初めて見つけたのは、一昨日のこと。
一目惚れだった。