「行くなら、これ着とけ
静岡、山の近くなら さみいぞ」



真木が車の中から
来る時に羽織っていた
臙脂色のコートを 彼女に投げる

少しだけ井上さんは
考えていたけど




「…ありがとうございます!」


そう言って
コートのソデに、腕を通した