「まあまあ二人とも、こんなところでケンカは良くないよ?」


「あ、はぁーい」


「…………」




いつもところ構わずアタシと口喧嘩してるクセに、どの口がそんなことを言うのだろう。




蒼葵は、アタシよりはもちろん琴沙よりも背が高くて、黒髪なんかさらっさらで清潔感があって。




顔立ちもけっこうな美青年で通ってるのに。




この軽薄ささえなければ、いくらでもモテるのに。




何を考えているのか、さっぱり掴めない。




おかげでアタシは……――




――っと。




そんな事はさておき。




とにかく今この三人が、一体どこに向かっているかと言うと。




「わぁ、ずいぶんと山の中に行くんだねぇ」


「まぁね」




窓の外の街明かりがまったく見えなくなった辺りで、それを興味深く見ていた琴沙が高く声を上げ、蒼葵がさらっと答えた。




車は、桂星市の街並みからだいぶ外れ、林に囲まれた一車線ぎりぎりの山道を奥へ奥へと進んでいく。