「それで? 今日は何の用? お買い物? お散歩? それともお勉強?」


「うー。そんな言い方しないでぇ。あたしお子様じゃないもんっ」




からかい半分で言うアタシに、琴沙は頬を膨らませて抗議してくる。




だからその言動の一つひとつが、お子様そのものなんだってば。




「あーはいはい。禁句だったわね。ごめんごめん」


「心がこもってなーいっ!」




――と、壇上で楽器の片付けそっちのけに、けっこう騒がしくやり合っているにもかかわらず。




周りにいる三十八名の部員たちは誰ひとりとしてこの間に割って入って来ようともしない。




まるで何事も無いかのように、各々(おのおの)雑談を交しながら楽器を片付けて、




「おつかれー」


「おつかれさん」


「また明日ねー」と次々に退室していく。




無理もない。日常茶飯事だからね、もはや。




少なくとも、我が吹奏楽部の部員たちにとってはこの反応が普通なのだ、悲哀なことに。




「かぁ、えぇ、でぇ、ちゃぁ、んっ!」


「いった! 痛たっ! いーたいってのにっ!」




この世の無情に浸っていると。


琴沙が、アタシのサムライポニテをリズミカルに引っ張った。