犯人は分かっている。




文句を言おうとして振り返ると。




「かーえーろっ」




そこには予想通り、フルートを手にした小悪魔の笑顔があった。




「琴沙……。どうしてアンタはそういつもいつも、アタシの髪を引っ張るのっ!」


「えぇー? だからそれはぁ、禾楓(かえで)ちゃんのポニテがいけないんだよぉ? そんなお侍さんみたいに高いとこにあって引っ張りやすいからぁ……」




小悪魔はアタシの問いかけに、舌っ足らずでのぉんびりとした口調でいつもと同じ言い訳をした。




入学当初から耳にタコが出来るほどそれを聞いているアタシは、彼女に言ってやった。




「あーはいはい。アタシの侍(さむらい)みたいなポニテが、長身のアンタには掴みやすいって言うんでしょ?」


「うんっ♪」




無邪気な笑顔で言ってくれちゃってもう……。




アタシは深く肩を落としてため息をついた。




嗚呼、これでまたひとつ幸せを逃したわね……。