「やーっぱり逃げたな湊。つか、同じクラスなんだから一緒に行くだろ、普通!」
「その普通は海斗の普通です!!」
……私と歩いてたら、いくらクラスの人気者でも、悪評が立つ。
それが、嫌なんだよ……。
私が、みんなに悪口を言われる海斗を見たくないから遠ざけてるのに。
全然、分かってないんだからっ。
「しかも敬語ヤメロし、なんか距離が遠くなったみてーだろ」
「海斗が異常に近すぎるんだよ!」
あぁもう、まただ。
また、大声上げちゃって……落ち着け、私。
とりあえず、ここら辺で深呼吸でもしとこう。
「え、そうかー?普通だろ?」
深呼吸をしていると、海斗は心底不思議そうな顔をする。
その鈍感さにムカムカしながら、私は海斗を睨んだ。
「度が過ぎてると思う!」
大事なことだから、念を押しておこう。
反省してくださいよ、ちょっとは!
そんな話を海斗としながら教室へとやってくると、教室に到着する。
「そうかー?湊と仲良くなるにはこれくらいしねーと……って、なんだ?」
先に中へ入った海斗に続くと、教室は水を打ったように静まり返っていた。
「おい、なんかあったのか?」
「……何ごと?」
海斗と一緒に立ち止まる。
その向こうに、床に座り込んだ毒島さんの姿が見えた。
なんで、床に座ってるんだろう。
まさか、何かあったのかな、また嫌がらせ……??
「毒島さん……?」
「ううっ……ふっく、うっ……」
両手で顔を覆う毒島さんの机には、張り紙のようなものが貼られていた。
「あれは……」
そこには、『ブスの毒島』『ブスに需要なし!!』といった、心無い最低な言葉の数々。
そして、悪意むき出しの毒島さんの似顔絵が張られている。


