「おーい、まだ寝てんのか、湊?」



まるで、犬の頭を撫でるみたいに、海斗が笑いながら私の頭をワシャワシャと撫でる。



「お、起きてるしっ、髪グシャグシャになるからっ!」



頭を守るために両手で髪を押さえる私を、海斗が楽しそうに見つめてきた。


もう、海斗の前だと、いつもの私のキャラが壊れる。

平常心でいられないっていうか……。



「ハハッ、大丈夫だろ、それでも湊は可愛いからな」


「はっ、可愛い!?」



頭をおさえながら海斗の手から逃げると、ニヤッと海斗が笑う。


え、何……なんか嫌な予感……。



「逃げんな……って!!うしっ、湊、確保!」


「えぇっ!?」


海斗は逃がさないと言わんばかりに、後ろから私をガバッと抱きしめる。


「な、なんなの本当にっ」


「いーや、クラスまで一緒に行こうと思って。前、移動教室行く時も、1人でスタコラ行っちまっただろ?」



それは……毒島さんを助けた時のこと?

ってそれよりも……どうして海斗は距離がいっつも近いかな!?

というか……慣れてない?



――ズキンッ。


すると、なぜだか胸が痛んで、モヤモヤしてきた。


なんだ、ズキンッて……。

胸が痛くなる理由も、そんな権利も無いはずなのに。