「ねぇ、まだ……その、早織ちゃんのことは見えてるのよね?」


「……うん、見えてるよ」



お母さんまで、早織が見えてる私を可哀想な目で見る。

お母さんのことは好きだけど、早織のことを否定しないで欲しかった。

どんな姿でもあの子は私の大切な親友なんだから。



「そう……何か、困ったことがあればお母さんに言うのよ?」


「うん……ありがとう」



そう言うのが、精一杯だった。


困ったことなんて無い。

親友を困ったことだと思ってるお母さんに、悲しくなった。


その後、私は淡々と食事を口に運ぶと、お弁当をカバンに詰めて、家を出た。



***


『おはよう、湊』


家を出ると、親友が笑顔で私に手を振っていた。


良かった、今日も会えた……。

本当に、この瞬間は生きた心地がしないよ。



「おはよう、早織」



そう、早織は私が朝登校するのに合わせて家の前に現れる。

そして、放課後この家に帰ってくると、消えてしまった。


だから、別れ際や、こうして朝を迎える度に不安になるんだ。


……もし、早織が現れなかったらって。


『湊、今日もなんか地味!ちゃんと化粧しないと!』


「いいんだよ、高校生なんだから」


『もーっ!せっかくイケメンと知り合えたんだから、グロスくらいはしないとっ』


イケメンって、絶対に海斗のことだよね。

もう、海斗と関わるつもりはないんだけどな。


そんなことを考えながら、私は早織と学校へ向かった。