【幼馴染*覆面系ノイズ【SS】】


小さい頃よく繋いでた渉の手
その手が今、私を壁際に追い詰めている

「お前、何のつもり?」

怒気を孕む声
いつの間にか声変わりしてた

私を見下ろす冷たい目
身長抜かれたのはいつだったっけ

ずっと隣の特等席で見てきた


「いつまでも周りウロついて説教ばっか。うぜぇ」
「渉が心配ばっかかけるからでしょ。おばちゃんだって…」
「はぁ…これだから幼馴染とかめんどくせぇ」
「幼馴染とか関係ない。私は渉の事…」

想いが溢れそうになった私の口を渉の手が塞ぐ

「俺はお前なんか…」


ねぇ、私が欲しい言葉は『好き』なんかじゃないよ
そのまま『嫌い』って言って

眼鏡の奥の瞳を揺らさないで
唇を震わせないで
早くその手で突き放して

お願いだから…

嘘。やだ
『好き』って言って…

ずっと隣で見てきたのに渉の気持ちだけが分かんない
ずっと残酷な優しさで私を縛り続けてる

無自覚な渉はずるいよ…