「あの、氷川先輩」


俺なんかじゃ力になれないかもしれない。


力不足で、頼ってなんてくれないかもしれない。



それでも、氷川先輩をひとりにはしたくない。


ひとりになれば、きっと……泣いてしまうと思うから。



これは俺の推測だけど、氷川先輩は。


知陽先輩にも言えない何かを抱えている。



「ひとりになりたいときは、呼んでください」


だから、俺の前でだけは無理をしないでそのままの氷川先輩でいてほしい。


そんな居場所を、俺がつくってあげたいと思うから。



「……うん、ありがとう」


きっと何かを悟ったんだろう。


振り返らずに、氷川先輩は頷いた。