「そういえば、桜庭くんって人と話したよ」
いたって普通に。別に何も感じてないかのような口調で話す。
すると、「桜庭くん」という自分の友達の名前を聞けたのが嬉しかったのか、遥は一瞬で笑顔になった。
「そっか、浩都か。けっこういい奴でしょ?」
「うん、そうだね」
それよりも私は、遥がたった数日しか一生に過ごしてないクラスメートのことを名前で呼んでることに驚いたよ。
でも、桜庭くんも私のことを「琴葉」って……。
いやでもあれは、ただ名字が同じでわかりづらいっていう理由だけだよね。私ったら、何を気にしてるんだろう。
「桜庭くん、遥の心配してたよ」
妙な胸騒ぎを隠すように、口を開く。でも間違ったことは言ってないはず。
なぜか私の心配までしてくれたけど、遥の心配もしてたもの。思い返すと、やっぱり優しいんだなぁ。



