「遥生くん、この子誰?」
「え、もしかして彼女?」
嫌悪そうな視線と、騒がしくなる人だかり。
もう、嫌だ。遥の周りから、早くいなくなってよ。
「違うよ。僕と琴は姉兄なんだ」
遥が何気なく発した言葉に、周りの空気が一気にほぐれる。
きっと、私が遥の彼女じゃなくてホッとしたんだろう。
……やっぱり、私なんかが遥の隣にいたら不自然だよね。
たとえ姉兄だとしても、きっとこれは入ってはいけない領域なんだ。
「遥、私はひとりで行くから。遥は友達と一緒に行ってよ」
「え、琴……?」
不安そうに私をジッと見つめる遥の目から、微かに動揺しているのがわかる。
急にこんなこと言うから驚いたのかな。
でも、私のせいで友達との仲を壊すようなことはしてほしくないから。
ここは、私が身を引くの。