試合が終わり、人がゾロゾロと球場から出ていく。


「結局逆転負けしたまま終わっちゃったね~。最後サヨナラのチャンスだったのに」


「あのおじさんは喜んでいるだろうな」


あぁ、私がぶつかっちゃった相手チームのファンのおじさんか。


「あははっ、そうかもね」



駐車場に停めている春兄の車に乗り込んだ。



「また行こうね!」


「行ってくれるんだ?」


意地悪っぽく笑いながら春兄は言う。


「もちろんだよ!家族行事みたいなものだし!」


すると、なぜか春兄は少し表情を歪めた。


「...うん、そうだな」


春兄の大きな手が私の頭を包み込む。


「私の頭撫でるの、春兄の癖だよね」


「癖でもないぞ?撫でたいと思ったから撫でただけ」


「じゃあ撫で癖ってやつだ」


「あははっ何だそれ」


和やかな空気が車内に広がる。


...ずっと続けばいいな、こんな関係。





そう思いながら、車は動き出した。