今日は土曜日。明後日からいよいよ合宿が始まる。すっかり忘れていた…なんて言えない。


そう言えば、春兄が集合場所の駅まで車で送ってくれるって言ってたけれど、その話も多分無しになるよね。


だって私、春兄を避けちゃってるし。


春兄から連絡があるわけでもない。



合宿の準備をしようと、必要な物を引っ張り出してみる。


行動表にある持ち物リストと照らし合わせながら、カバンに詰めていく。



「トランプとか必要だよね、あっても困らない」


部屋に私一人というのにぶつぶつ呟きながら、リストにはない余計な物を次々と詰め込んでいく。


すると、ベッドに置いていた携帯が鳴った。



電話だ…



「え、は、春兄?」



思わぬ人物からの連絡。名前を見て一瞬手が止まったが、通話ボタンを押して耳に当てる。



「も、もしもし春兄?」


『藍?元気か?急にごめんな』


久しぶりに聞いた、春兄の声。


やっぱり落ち着くな…


「ううん!どうしたの?」


『明後日から合宿だろ?7時に迎えに行くから。それまでに出れるように準備しといて』


覚えていてくれたんだ…少し気まずくなって、この話はなかったことになると思っていた。


こちらから『送ってよね』なんて言えるはずもなく、もちろん思ってもいなかったけれど。


優しい春兄のことだから、きっとそんな私の気持ちを察して、こうして連絡してきてくれたのかな。


「でも、いいの?」


『…何で?』


「だって私…春兄を怒らせちゃって」


すると電話口から、ふっと笑う春兄の声が聞こえた。


『ちょっと一人で考えたくてさ。勝手でごめんな?藍にも迷惑かけたよ。それに送って行くのは約束してたことだから』


迷惑だなんて思っていない。思っているはずがない。むしろかけてしまったのは私の方だ。だから、謝らせてしまい申し訳ないと思った。