---次の日。


朝、起きてすぐに確認した私の携帯。


メッセージの通知は…ない。


もしかしたらアプリの不具合で通知が来ていないだけかも、と思い、アプリを起動させるも、はやり春兄からの返事は来ていなかった。


ふと時計に目をやると、まだ8時。


カーテンを開け、太陽の光を部屋の中に入れる。強くも弱くもない日差しが顔に当たり、眩しさで目を細める。


すると、細目ながら窓の外にスーツ姿の春兄が見えた。



私は咄嗟に窓を開け、気づけば『春兄!』と声を掛けていた。


春兄は私の方を向き、歩いていた足をゆっくりと止める。



「…あ、おはよ春兄。日曜も就活なんだ?」


「…あぁ」


笑みを浮かべるでもなく、怒るでもなく、ただ小さく声を発した。


どうしようかおどおどしていると、そんな私を見た春兄は少し口角を上げる。


「藍、昨日はごめんな。俺どうかしてた」


「春兄…」


「でも、本当に藍は気にしなくていいから」


それだけ言って春兄は歩き出した。


その姿を、見えなくなるまで目で追う。




春兄は、一体何を抱えているのだろう。


優しい春兄の事だ。きっと、私に心配をかけないように、そうしてくれてるんだ。


でも…知りたい。


私が知らない春兄の過去、知りたい。


今までお互い隠し事はしていなかったと思っていたのに、日に日に感じる春兄との距離に戸惑いを隠せないでいた。


大人と未成年の壁?いや、私たちに限ってそんなもの…


「あるの…かな」


私は春兄にとって、邪魔な存在なのかな…?


春兄自身はそう思っていないかもしれない、気づいていないだけで。