「お前のそういう我儘なところに疲れたんだ。もう俺に関わらないでくれ」


---ズキン


何だろう。


私が言われたわけじゃないのに、胸がチクンとした。


私、春兄に我儘ばっかり言ってきた。


もしかしたら春兄、私のことも…






「ちょっと春人!待ってよ!」


ふと目を逸らした隙に春兄は女性を置いて先を歩いていた。


それを追いかけていく女性。



"春人"って呼んでいた。


親しい関係なのかな?




でもそうしたら、喧嘩の原因は?





離れていく二人の背中をじっと眺めることしか出来なかった。


春兄の怒った顔、怒鳴り声、そして何より…



『お前のそういう我儘なところに疲れたんだ』



あの言葉。


胸がざわざわする。




あれは本当に、春兄なの?









重たい足取りで駅へと向かった。


何だか、気分が乗らないや。


さっきまであんなに意気揚々としていたのに。


さっきの場面が頭にちらつく。