だから、とりあえず付き合ってみようという考えがそもそもなくて。


私が恋した場合、告白するというまでには至らなくて、何やかんやで気づけば気持ちが冷めていることもある。


あれよ、きっと、憧れの存在っていうだけだった、みたいな?



うん、きっとそうだ、ごめんなさい、前言撤回します。人並みに恋した経験もありません。本気の恋というものを経験してみたい今日この頃である。



「ほら、藍、ティッシュ。とりあえず鼻かんで手拭いときな」


くしゃみで鼻水を垂らした私にさっとティッシュを差し出す彼女が伊藤充希(イトウミツキ)。私の一番の親友。


充希とは中学で知り合い、当時お互い教室で独りぼっちだった。


充希の見た目はクールビューティーといった感じで、背中まで伸びた真黒のストレートヘアが特徴的。切れ長の奥二重とシャープなフェイスライン、とても美人だ。


最初は怖い人かと思っていたのだが、教室で一人でいた私に声を掛けてくれたのは充希の方だった。


『私知り合いいなくて、よかったら友達になって?』


クールな顔立ちとは真逆に、とても恥ずかしそうにそう言ってきたあの時の充希は今でも忘れない。