当時、藍は内気で大人しく、あまり自分を主張しないタイプだった。


そんな藍は、よく友達からおもちゃを奪われたり、砂場で遊んでいたら邪魔をされたり、いじめと言うには大袈裟かもしれないが、イタズラをされていた。


昔から泣き虫だった藍。


その場面に遭遇すれば、もちろん助けたりはしていたものの、いつでも一緒に居たわけではなかったから、俺の知らないところでたくさん酷いことをされていたのだろう。



ある日、藍がブランコに乗っていると、男の子二人が藍を無理やり下ろそうとした。


藍は頑なに拒み続けたが、一人が藍を思い切り押し、頭から落ちてしまった。


もちろん大泣きする藍。


藍が落ちた瞬間を見た俺はその場に駆け寄り、男の子二人に怒鳴り散らした。


「おい!危ないじゃないか!!女の子を怪我させるなんて、男として最低だぞ!?」


上級生の俺に怯んだのか、二人は藍に謝りもせずに足早に去っていった。


まだ泣き続けている藍。



「藍、大丈夫か?痛かったな、怖かったな」


「うっ…春兄ぃ…」


ギュッと抱きついて来る藍。


この子は俺がいないとたくさんいじめられ、傷つく。


俺が守ってやらないと…そう思った。



「俺がいるから。安心して」


そう言うと、藍は顔を上げて、目に涙をたくさん溜めて『ありがとう』と小さく微笑んだ。


その時からだ。


藍を守らなきゃという使命感と同時に、恋心を抱いたのは。