南さんが教育実習に来て5日目。


何事もなく無事に1日を終えた私は、河西くんと並んで教室を出た。


「鵜崎〜最近勉強してるか?」


河西くんは、春兄に家庭教師をやってもらっていることを知っている。


河西くんを誘ったこともあったけれど、『俺も教わるなんて申し訳ない』と断られた。


「うん、案外ちゃんとやってるよ?」


他愛ない話をしながら校門に向かっていると、見覚えのある車が目に留まった。


「あれ?春兄の車?」


私の言葉に河西くんもそちらに目を移す。


遠目だが、あれは確かに春兄のものだ。


決して珍しい車種ではないが、直感的にそう思った。



春兄と何か約束事していたっけ?



不思議に思いながら、春兄の方へと足を進めようとした。その時だった…


私よりも先に、春兄の元へと駆け寄った人物。


「え…?」


南さん?どうして?


「あれってうちのクラスの実習生だよな?何で春兄さんと?」


南さんが春兄の元カノということは、河西くんにも充希にも教えていない。


教えたところで誰も得をしないと思ったから。



車の運転席から出て来たのは春兄。


やっぱりあれは、春兄の車だ。



二人はこちらに気づいていないみたい。


声は聞こえないが、何かを話してそのまま車に乗り込んだ。


助手席には南さん。



あそこは、いつも私が座っていた場所。


もしかして、二人は復縁したの?



考えるだけで胸が痛くなった。


「…鵜崎?」


「…」


私のことを、河西くんがどんな顔で見ているかなんて知らずに。