「なになにー?種目は男子野球、女子ソフトボール!?なにこれ、自分の好きなものしか詰め込んでないじゃん。ないわー」


「何か言ったか伊藤」


黒山の尖った鋭い視線が一直線に充希のところへ飛んでくる。


「いえー」


「声大きいよ、充希一番前なんだから」


「でもさー、野球とソフトよ?自分が野球部の顧問だからって2種目だけとかありえないでしょ」


黒山は球技大会に相当力を入れているみたいだな。


「と、いうわけだ!最後のページに出欠表があるから、それに記入して来週まで持ってこい!いいか?進学予定の野郎は全員参加だからな忘れるなよ!?」


黒山の太い声が教室中に響き渡る。そんな黒山とみんなの温度差に当の本人は気づいていない様子。...おめでたい人だ。




「はぁ...」



隣から聞こえてきたため息。ちらっと目をやると、一人の男子が行動表を曇った顔をして見ていた。


えっと、確か名前は...




「河西くん...だよね?どうかしたの?」


河西涼(カサイリョウ)くんだ、最初見た時から、爽やかな人だなーって私の中では好印象だ。


直接話したことは全然ないのだけれど。