おれの帰り際、玄関先まで見送りに来た花乃ちゃんは、手を体の後ろに回してソワソワしていた。
そもそも、今日はずっと落ち着かなかった。
見て見ぬふりをしてたけど、このままじゃ、おれも帰れない。
「何かおれに渡すものがあるんじゃないの?」
笑顔で訊いてあげたら、鼻先に勢いよく、小さな包みが差し出された。
「作ったから。学校に持っていった友チョコとは違うやつ。フォンダンショコラ。レンジで20秒くらいチンして食べて」
「ありがとう。やっともらえた。お返しは、ちゃんとするよ」
膨れっ面が、そっぽを向いている。
一時期、しっかりメイクをしていた。
ケバい化粧よりすっぴんのほうが肌も目元もキレイに見える、とハッキリ指摘したら、その日は泣かせたけど、次のときからすっぴんに戻った。
おれはこっちのほうが断然好きだ。
横顔が少し大人びたと思う。
かわいいだけじゃなくて、美人になってきた。